労働者が退職するなどして、雇用保険の資格を失うと、会社は、「雇用保険被保険者資格喪失届」を、ハローワークに提出する必要があります。
雇用保険被保険者資格喪失届をきちんと提出しないと、退職した労働者の失業保険(基本手当)の受給に支障を及ぼしかねません。
雇用保険被保険者資格喪失届は、記入方法や提出期限が決まっています。
雇用保険被保険者資格喪失届について弁護士が解説します。
雇用保険被保険者資格喪失届とは
「雇用保険被保険者資格喪失届」は労働者が退職するなどして雇用保険の資格を失うと会社から交付されるものです。
具体的に雇用保険被保険者資格喪失届とはどのようなものなのか、以下で解説します。
(1)雇用保険の被保険者でなくなったことの届出
雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険の被保険者でなくなったことを示す届出です。
会社の労働者は、在職中は基本的には雇用保険に加入していますが、退職時には雇用保険から外す手続きが必要となります。
その際、必要となるのが、雇用保険被保険者資格喪失届です。
労働者が退職などをして雇用保険の資格を失ったときには、事業主が「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成し、雇用保険の資格を失った日(退職日など)の翌日から起算して10日以内にハローワークに提出しなければなりません。
また、事業主は、雇用保険被保険者資格喪失届の他に、原則として離職証明書もハローワークに提出する必要があります(労働者が離職票の交付を希望しない場合を除きます)。
離職証明書は、失業保険(基本手当)の給付額の決定等に用いられます。
(2)雇用保険被保険者資格喪失届の作成が必要な場面
労働者が雇用保険の被保険者でなくなったときに雇用保険被保険者資格喪失届の作成が必要となります。
労働者が雇用保険の被保険者でなくなる場合の典型例は、労働者の退職です。
しかしその他に、例えば次のような場合にも労働者は雇用保険の被保険者ではなくなりますので、雇用保険被保険者資格喪失届の作成が必要となります。
- 労働者が死亡した場合
- 兼務役員が従業員としての身分を失った場合
- 労働者から役員になった場合
- 継続的に週の所定労働時間が20時間未満となった場合
雇用保険被保険者資格喪失届の記入方法
雇用保険被保険者資格喪失届は、離職証明書とともに、ハローワークが基本手当の受給内容(受給資格、給付日額、所定給付日数、給付制限等)を決定する際の基礎資料となりますので、正確に記載する必要があります。
雇用保険被保険者資格喪失届はハローワークのサイトからダウンロード可能です。
またハローワークのサイトの中には記入例も掲載されています。
引用:雇用保険被保険者資格喪失届|北海道労働局 北海道ハローワーク
【被保険者番号、性別、生年月日】
被保険者番号や被保険者の性別、生年月日を雇用保険被保険者証(雇用保険に加入したときにハローワークから発行された証明書)と照らし合わせて記載していきます。
【新氏名】
雇用保険被保険者資格喪失届を提出する時点で、雇用保険被保険者証と氏名が異なる場合には、「新氏名」の欄に新しい氏名を記載する必要があります。
これに該当しない場合は、空欄にしておきます。
【離職年月日】
離職年月日には最後の就労日など、最後の在籍日を記載します。
また、氏名変更届と同じフォーマットを使用するため、雇用保険被保険者資格喪失届として利用する場合には表題にある「氏名変更届」と下の方にある「第14条1項」の文字を二重線で消すようにします。
【被保険者でなくなったことの原因】
「被保険者でなくなったことの原因」の欄には、離職理由を、なるべく具体的に記載します。
この離職理由は、基本手当の受給の可否や給付日数に関係してきます。
なお、会社と退職者との間で主張する離職理由が異なる場合、ハローワークにおいて、事実関係を調査し、離職理由が何か判断します。
【印刷の注意点】
雇用保険被保険者資格喪失届の印刷時には、A4用紙(白色)に、倍率100%で印刷します。
参考:雇用保険被保険者資格喪失届|北海道労働局 北海道ハローワーク
雇用保険被保険者資格喪失届の提出期限
雇用保険被保険者資格喪失届は、その会社の「被保険者でなくなった事実が発生した日」の次の日から10日以内にハローワークに提出する必要があります。
「被保険者でなくなった事実が発生した日」とは、退職による場合には、退職日となります。
労働者が死亡した場合には、「被保険者でなくなった事実が発生した日」とは死亡した日が該当します。
これらの日の翌日が、提出期限の起算日となります。
失業した労働者は、雇用保険被保険者資格喪失届の提出がないと、基本手当の受給に支障が生じますので、早めに提出するようにしましょう。
参考:手続き一覧表|厚生労働省
雇用保険被保険者資格喪失届の提出方法
雇用保険被保険者資格喪失届の提出時には、次の添付書類も必要です。
- 出勤簿
- 退職辞令発令書類
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 離職証明書(当該労働者が離職票の交付を希望しない場合を除きます)
- 離職理由が確認できる書類
ハローワークの窓口で提出の手続ができるほか、郵送やオンライン申請も可能です。
【窓口】
ハローワークの窓口で雇用保険被保険者資格喪失届を提出する場合は、担当者の印鑑も持っていくと便利です。
ただし、現在は新型コロナウイルスの流行の影響で、郵送またはオンラインによる申請が推奨されています。
【郵送】
郵送で雇用保険被保険者資格喪失届を提出する場合には、郵便事故を防止するため、特定記録や簡易書留で提出するとよいでしょう。
また、郵送で雇用保険被保険者資格喪失届を提出する場合には、切手(特定記録または書留郵便の料金分)を貼った返信封筒を同封する必要があります。
【オンライン申請】
オンライン申請する場合は、電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)から行うことができます。
参考:手続き一覧表|厚生労働省
参考:雇用保険被保険者資格喪失届(離職票交付あり)電子申請手順|厚生労働省
参考:新型コロナウイルス感染拡大防止のため、 雇用保険の手続きを「電子申請」または「郵便」で行ってください。|厚生労働省
【まとめ】雇用保険被保険者資格喪失届に関して不明な点は専門家に相談
雇用保険被保険者資格喪失届は、雇用保険の被保険者でなくなったことを示す届出です。
この雇用保険被保険者資格喪失届では、離職証明書とともに、労働者が失業保険(基本手当)の受給をするために必要な大切な書類です。
労働者が退職などをして雇用保険の資格を喪失したときには、事業主が「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成し、雇用保険の資格を失った日(退職日など)の翌日から起算して10日以内にハローワークに提出しなければなりません。
雇用保険被保険者資格喪失届を提出する際には、次の書類も添付します。
- 出勤簿
- 退職辞令発令書類
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 離職証明書(当該労働者が離職票の交付を希望しない場合を除きます)
- 離職理由が確認できる書類
雇用保険被保険者資格喪失届や離職証明書の記載内容は、基本手当の受給内容に影響を及ぼしますので正確に記載するようにしましょう。
特に離職理由は正確かつ具体的に記載する必要があります。
雇用保険被保険者資格喪失届の提出などに関して不明な点があれば、専門家に相談しましょう。
弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。